母が開業する。それも着付けの教室を開いて、スクール経営だ。
僕の家は、父は好き放題の人で、人の話は聞かないし、年をとってから
は、毎日ぐだぐだ文句ばっかり言ってて、とっても煙たい存在だった。
ま、僕が生まれてからずーっとそうだったから、いまさらなにをという
感じだったけど、母の苦労は大変だったと思う。
父が亡くなったので、母には、人生を謳歌してほしいもんだと思ってき
ましたが、去年から、得意の和装関係の仕事を始めたいとは聞いてた。
でも母ももう70だから、そんなに働かなくてもなぁとも思ってたんだけ
ど、自宅で着付けの教室を始めるそうだ。スクールとして成り立つかど
うかわかんなかったから、あなたには相談してなかったけど、生徒さん
の数が集まって、十分やってけると思うという。
着付けの教室だけで、月額20万円の収入が目標。それが安定したら、
看板出して、やってくつもりなのよという。へー、具体的なもんだ。話
しぶりを聞くと、やる気もあるし、なんだか成功しそうな口ぶり。
近所の美容専門学校の生徒さんから、相当な問い合わせがきているとか、
美容室の見習いさんランクの人達にも、口コミでスクールに生徒さんが
やってくるらしい。着付けの教室として、場所をどこか借りないといけ
なくなるかもと言っている。
僕より収入あがったら、おごってねと言ったら、笑っていた。
父に従う人生を送ってきた母。僕はそれを見てたせいか、誰にも従わな
い人生を選んだと思う。誰にも、僕に従えと強いたこともない。
そんな母に、何か要るものある?と聞くと、着付けの教室のことなら、
着物の小物を全部集めるのも大変だけど、御月謝を整理する台帳とか、
ハンコとか、細かいものがいろいろいるのよねぇと言う。
母世代の開業は、紙にハンコかぁ。
パソコン買って、パソコンで管理した方が早いよ。今度僕がセッティン
グするよと約束してしまった。